【レビュー】毒も喰らう,栄養も喰らう,刃牙ドリンクも喰らう!

前口上

いんすもすなるれびゅうといふものをのほほんもしてみむとてするなり。
……この記事を書いている31期生ののほほんは,基本的にレビューだとか何かの紹介だとかは書いたことがない。
これまでに書いた文章はおそらく数千を超えるだろうが,何かの紹介記事を書こうと思ったことはほとんどなく,おそらくそれは,外的世界に存在する何かを他者に伝えるということが,私という人間の本質ではないということなのだろう。

では,私の本質とは何かと言うと,おそらくそれを表すのに相応しい語は「物語」である。
「ぽえむ」に始まり,小説も,旅行記も,はたまた本業の論文に至るまで,私は「物語」を書くことに特化していると自己認識する。
「物語」の定義は難しいが,私にとってのそれは,「問題の発生」「その解決」という展開を含むものと定義できる。
個人的な体験であれ,空想の産物であれ,社会における問題であれ,私は三十年近く,このフォーマットに従って文章を書いてきたのだ。
よってINSの主力商品(あ,これメタファーだからね)のレビューを私は書いたことがなかった。
しかし,逆に言えば,物語のフォーマットであるならば,私にもレビューが書けるということである。

そう,事件は起こったのだ……。(ほらね,どうしても物語になっちゃう。)

発端

そもそもこの発端をいつまで遡ればいいのかというと,おそらく2015年のs-ins.net新年会である。
これは,私達31期生を中心とするメンバー(この年,1人だけでも超高校級の才能を持つオタクが,野球チームが作れるぐらい総帥の元に集結した。まさにキセキの世代)が年に数回開いている会合であり,そのトークの濃さに匹敵するものを私は他に知らない。で,17時間ぐらいアニメ鑑賞をしてお開き,となった時にメンバーの虚式(こしき)がそっと私に紙袋を手渡してくれたのだ。
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忘却の旋律DVD-BOX
正直,こんな紙袋をもらったことがある人間は世界でも私だけじゃないかというほどレアなエクスペリエンス。
そのあまりの唐突さに,なんかこう,瞬間的に心から「ありがとう!」と言えず,「お,おう,サンクス」ぐらいの反応になってしまった私を責めることができる人は多分あんまり多くない。
いや,実際面白くて堪能できたのだけど。「スタードライバー 輝きのタクト」のスタッフの作品で,「鳴り響け!僕のメロス!」と言いながら弓矢でロボットと戦う少年少女の物語である。
言葉では言い表せない魅力があるのだが,一番気に入ったのは,最終回の手前で敵の作戦が成功した時,主人公たちがカラオケボックスの中で延々と敵がドヤ顔で戦略を語るのを聞かされるシーン,と言っておこう。(とにかくそういう奇抜な演出が映える作品)

で,これを頑張って走破(アニメオタク用語で,ブルーレイなどを1話から最終話まで全て見ること)したので,返却のついでに飲み会もしようと画策。ちなみにこの飲み会も例によって無茶苦茶濃かったので,一部をこちらで記事にしておいた。

s-ins.net プチOFF会報告 2015年春

わざわざ返却にかこつけて,飲み会をしたのは,一つはやはり彼等との会話が本当に楽しいからというのもあるのだけれど,もう一つは,虚式がまた何か面白いものを貸してくれるんじゃないかという下心もあったわけ。
そしたら宴もたけなわという時にまた虚式がカバンから何かを取り出すじゃあないか!――計画通り!!

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刃牙ドリンク
現れい出たるは週刊少年チャンピオンで看板をはる格闘技漫画「バキ」の絵が書かれた正体譜面のドリンク。そのあまりの唐突さに,なんかこう,瞬間的に心から「ありがとう!」と言えず,「お,おう……おう?」ぐらいの反応になってしまった私を責めることができる人は多分あんまり多くない。
「えっと,これはなんかのグッズなん?」
「いや,ダイソーで普通に売ってた」
プレミアム感なし,まさかの100均商品でございます。
「んじゃまあ……ちょっとレビューでも書いてみるわ」
「ぜひ,頼む」
「……でも,ちゃんと書けるかな?これの感想って「邪ッ!」とか「えふっえふっえふっ」とかにしかならんような気も……」
「wwwww」

……そして現在に至る。

 

開封前,または範馬勇次郎の金言

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というわけで,まずは缶の写真から。

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左が主人公の範馬刃牙(はんまばき)。

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右が主人公の父親,「地上最強の生物」・範馬勇次郎

飲みたくねえ~~~~~!!

「よし,飲もう!」と思わせるのとは全く逆の効果を持っているとしか思えない絵面である。
ところで,強いて言うなら,どちらの方が飲みたくないだろうか?この漫画を読んだことがない人ならおそらく黒色の鬼のような形相をした男の方と答えるであろう。
しかし,通算100巻を超える刃牙シリーズを読破している私の考えは違うッ!より嫌悪感を感じるのは白色の青年の方である。この絵を見ていると,どうしても,第1部グラップラー刃牙の最終決戦で,この主人公が戦いながら失禁し,その飛沫が観客席に飛び散り,ヒロインがそれを嘗めたシーンを連想してしまうのだ!
しかもその時の実況アナウンサーの台詞が「戦いの聖水を―――」「誰もッ!」「誰もよけることは許されないのですッ!」。僕にその舌を汚せというのか。

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裏の原材料も確認してみる。炭酸入りである。ちなみにグラップラー刃牙を全巻読破しているタイ人の知り合いがいたので,この缶を見せたところ,開口一番に「お,炭酸抜きのコーラですか?」と聞かれた。おそるべき反応速度であり,さらにネタ的にもそれが正しいような気がしたのだが,所詮は100均商品,中身は普通のドリンクということであろう。
ところで,私があまりこの手のレビューをしないもう一つの理由として,「偏食家なのであんまり人工的な食べ物は食べられない」というのがある。
例えばメロンソーダとかは飲めない。ジュースもできれば100%果汁のものを口にしたい。然るに,この刃牙ドリンクの原材料たるや人工物とアミノ酸ばかり……と悲嘆にくれた時に思い出したのが,範馬勇次郎(鬼のような男)が食について語った台詞である。

「うむ……」
「防腐剤… 着色料… 保存料…」
「様々な化学物質 身体によかろうハズもない」
「しかし」
「だからとて健康にいいものだけを採る」
「これも健全とは言い難い」
「毒も喰らう 栄養も喰らう」
「両方を共に美味いと感じ―――」
「血肉に変える度量こそが食には肝要だ」

刃牙は格闘漫画だが一周回ってギャグ漫画になっている。さらには地上最強の生物・範馬勇次郎は強さの描写が凄すぎて,やることなすこと全てギャグになってしまうキャラなのだが,上の言葉に関してだけ言えば,おそらく正論。萬(よろず)に通じる正道であると敬服した言葉である。(もちろん,ギャグみたいな人間が正論を吐くという高度に計算されたギャグなのだが)
漢たるもの,一度敬服した言葉に対して裏切るようなことはあってはならない。あの日くれた言葉が今でもこの胸に確かに届いてるから!この正体不明のドリンクも,レビューという慣れぬ環境も,血肉に変える度量を持たねばならぬ!我が決意は固まった。

 

実飲

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グラスについでみた。いや,正直スポーツドリンクをグラスに注いでも仕方がないと思ったが,色の確認は色々な意味で重要なので。そして我が家には透明なグラスはこれしかなかったのだ。
とりあえず金色ではなかったことに安堵した。「闘いの聖水」のイメージが急速に脳裏から消えていく。
見ての通り,色は黒で炭酸の泡が立っている。これならいっそのこと「炭酸抜きのコーラ」を目指しても良かったのではないか。ちなみにパッケージは違うが,刃牙も勇次郎も内容は同じだった。

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匂いも嗅いでみたが,私は「繋ぎとめられぬ男」(ミスター・アンチェイン)ビスケット・オリバと違って,こういったものを自在に形容する能力を持たない。いや,もちろん
「まずは格闘者・・・中国拳法。イメージでは何種類もの站樁(たんとう)
それも一人や二人ではない、一面のかませ犬。そこへ微かに原始人・・・
さらに日本の武士に似たものが混じり、タダ事ではない血と汗を予感させている」
とかデマカセを書いてもいいのだが,それをやったらレビューではなくなるのでやめておく。
そして,意を決して飲む……ッ!

チュピ…

危ッ!

この刺激は一体!?

 

ゴキュ…

本当ニ甘イ……ヤハリ飲料(ドリンク)デス……

まあ,ネタはこのぐらいにしてきちんと書くとオロナミンCとかリポビタンDのような系列の栄養ドリンクだった。
ただ,あれらほどガツンとくる刺激はなく(おそらくそこまで行くと医薬部外品になるのだろう),最も近いのはおそらく,同じく缶に入っているリアルゴールドである。刺激が強くなく,甘いという点が似ている。
もっとも私は栄養ドリンクもほとんど飲まないので,もっと近いものがあるかもしれない。
栄養ドリンクとしては刺激は少ないがその分飲みやすいのではないかと思った。
100円という値段設定を考えれば十分にアリで,スッキリした気分になれる。

結語

個人的には刃牙ならこれを愛飲してもおかしくない(炭酸を抜くかどうかは別として)が,勇次郎はやはりこれは飲まないのではないかと思う。でも,もっとこれを愛飲そうなキャラがいた。明日を捨ててドーピングにかける漢,ジャック・ハンマーだ。ただ,ドーピングとかマックシングとかゲロ吐いてるイメージが強すぎて,パッケージには選ばれなかったのだろう。最もこれを飲んで「強さ」が手に入るかどうかは別問題だが。
後,飲み方としてはやはりグラスに移すのではなく,缶から直接飲んでる方が旨く感じる。そっちのほうがドーピングしてる感じが出るし。