2016年公開のアニメ映画総括

興行収入200億円突破の「君の名は。」をはじめとして2016年も数多くのアニメ映画が公開された。その中から個人的に印象深い作品を振り返ってみる。

・ガラスの花と壊す世界
 すっかり忘れ去っていた2016年初頭公開アニメ映画。かなりがっしり骨太の設定が眠っているようで、それが表に出てこないのは構わないのだが、中身にあまり活かされなかった……というか、変に難解な作品になる原因になってしまった感じ。

・KING OF PRISM by PrettyRhythm
 2016年の「応援上映」の流れはこの作品が生み出したはず。公開は1月。「プリティーリズム」からのスピンアウトだが、プリリズを知らないような人まで熱狂させていたような印象がある。実際、応援上映じゃない回でも客席のリアクションが少なからず伝わってくる作品で、「お約束」を知らなくても楽しめる。これは1人でBD見るタイプではなくて、みんなで空気を共有すべき作品。お友達と一緒に見よう!

・コードギアス 亡国のアキト 最終章 愛シキモノタチヘ
 2016年2月公開。全五章立てになった「コードギアス 亡国のアキト」のラスト。テレビアニメ第1話では衝撃を受けたもので、そこからのスピード感あるパズルのような展開は引き込まれるものがあったが、第24話・第25話、および第2期は結果的には蛇足だった感。「亡国のアキト」ではギアス能力が都合のいいブラックボックスと化していて、ロボットバトルはスゲェがお話としてはどうだろうという展開の連続だった……。

・たまゆら~卒業写真~ 第4部 朝-あした-
 OVAから始まった「たまゆら」シリーズの、最後の1年間を描く映画「たまゆら~卒業写真~」の完結編。こんなにも大事件のない「ちょっとした日常」を積み重ねてきて、とうとう高校卒業に至るなんて。すごく満足度の高いシリーズだった。

・映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!
 プリキュアの映画シリーズはおおむね満足度の高い作品が多いが、本作は敵役・ソルシエール様が思わず様をつけたくなるようなヒロイン力(ひろいんちから)を発揮。バトルも、プリキュアなのにミサイルがばんばん飛んで盛り上がる。

・名探偵コナン 純黒の悪夢
 コナン映画といえば「怪盗キッドと新一を勘違い(or入れ替わり)」「蘭ねーちゃんのピンチにコナンが思わず「らーん!!」と絶叫」「蘭ねーちゃんの怪力が世界を救う(or起死回生の一撃が出る)」てな感じですが、本作はそういったお約束からちょっと離れて、赤井と安室の絡みがメインとなり、その手の女性ファンに大好評となったのでした。
 「観覧車の上で赤井(声:池田秀一)と安室(声:古谷徹)がくんずほぐれつのバトル」で、その面白さが伝わるだろうか。ほんと、突っ込まざるを得ない。ガンダムだよ、それは!

・シン・ゴジラ
 アニメではないけれど、2016年夏の映画としてこの作品は外せない。ヱヴァで疲れ果てた庵野秀明のオアシス的な作品かと思いきや、こっちに注力しまくって余計に疲れているんじゃないのかという一本に。「ゴジラ」シリーズがどんどんパワーダウンしていって、ギャレス・エドワーズの「ゴジラ」で「どうして東宝ではこういうのができないんだろう?」と思った後だっただけに、「やっぱり庵野秀明って凄い」と思わされた作品。情報出しコントロールも庵野秀明が中心となって行っていたということで、通称「蒲田くん」の登場だとか、本気の火炎放射のときに下顎が開くとか、背びれからもビーム出しちゃうとか、初見の衝撃は大きかった。

・君の名は。
 新海誠監督の作品らしい映像美は「言の葉の庭」以前も同じだったが、初日から客の入りが(そもそも割り当てられたシアターが)違っていて「ああー、これで新海誠はマイナーメジャーではなく、メジャー監督の仲間入りだな」と実感した。結果的には興行収入200億円突破の大ヒット作品で、メジャー監督どころか宮崎駿と並ぶ「日本を代表するアニメ監督」になっちゃったわけだ。
 「当たる要素を詰め込んで作っているのだから当たって当然」という声に、新海監督が反論する一幕もあったが、それでも面白いのだから仕方がない。ストーリーの骨子はド王道でも構わないのですよ。

・GANTZ:O
 「実写版作ったのに、まだやるの?」「しかもCGィ~?」という声の聞こえてきそうなCGアニメーション映画版。これが、GANTZのもともとの絵柄や作風、そして制作したデジタル・フロンティアの作品愛と相まって、高品質な一本に。ガンツロボとかガンツスーツとか、漫画で描くのがやっとでアニメにして動かすなんて無謀なんじゃないかと思ったら、とんでもない。動くとこんなにも迫力なんだなと思い知らされる。(これで1からアニメ化しません?)

・この世界の片隅に
 GANTZ:Oとは別のアプローチで徹底した原作再現(というか史実再現)を行った作品。「細部に神は宿る」を地で行った結果、戦中の広島や呉の姿をスクリーン上に描き出すことに成功し、アニメファンのみならず高年齢層にまでリーチした。また、絵だけではなく、すずさん役を演じたのんのハマり具合は「本人か」と思わせるレベル。

・ポッピンQ
 東映アニメーション60周年記念作品。「ダンスをする」が先にあってストーリーが練られたせいか、ダンスシーンの出来がいい一方で、ストーリーはつじつまもテンポもガタガタ。最後まで見ると、実は高校生編に話が続くというオチが待っていて、回収されない伏線はこのせいだとわかるのだが、オリジナル映画を劇場まで見に行って「実はまだ続く」って、そりゃないよ。

2017年も楽しめればよいなー、っと。