「天神乱漫」感想~時間が問題を解決することはない~

プレイしていない人にも見て欲しい、PCゲーム「天神乱漫 -LUCKY or UNLUCKY!?-」の感想です。
ネタバレは極力なしでいかせてもらいます。


あらすじ
主人公、千歳春樹は不運であった。
財布を持てば落とす。
エアコンは夏本番で故障する。
生まれながらにしての不運、それが春樹の日常。
そんな中、自ら神様と名乗る少女がやってきた。
彼女は言う、
「その不幸からお主を助けに来た」

神様と同居してしまう系のアレですね。


まず最初にプレイ中のスクリーンショット集から抜粋したものを紹介します。

「やっぱり……頼まれた方は、嫌……ではないでしょうか?」

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人に頼れないまひろさんのセリフ。
他人に遠慮し、自分でなにもかも成そうとする。
辛いと想ったら頼っていいんですよ。
別に仕事頼まれただけでは怒りませんから。むしろ嬉しいです。
仕事を頼むっていうことは相手を信用してるってことだから、下手に言葉にするよりも伝わるものがあるんじゃないのかな。
仕事を頼むことも人間にとって重要な能力なのですよ。

誰かの犠牲の上に成り立つものが『幸せ』だなんて認めない。

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春樹のセリフ。
あるヒロインは主人公のとんでもない不幸を肩代わりしようとする。
主人公はそれを拒む。
不幸は自分自身のものだから、相手が不幸になることはないと。
ヒロインは常日頃から不幸に悩まされている主人公を見て悲しむ。それならばいっそ私が……。
しかし、忘れてはいけない。
「誰か」というのには「自分」も含まれているということ。
二人とも相手を思うばかりで自分のことがおざなりになってしまった。
それでは「幸せ」とは言えない。
行き過ぎた自己犠牲の精神は自己満足と同じ。
相手を想うのなら、別の選択があるはず。

「そうだな。はるきは変な人間だからな。異常こそが正常な世界で生きてる人間だな」

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まさしく報道部ですね。

さて、異常こそが正常な世界で異常な人は異常か否か。
全員異常なんでしょ。その中で異常なら正常ですわ(白い目)派。
全員異常の中でもひときわ(鈍く)輝くのだからそいつは超Funkyな異常者だぜ派。
どちらか?
前者は正常の対義語に異常を持ってきている気がする。
裏の裏は表である。異常の異常は正常だ。
後者は正常を超えた先に異常があると感じる。
正常を超越した異常のさらにさらに先。
前人未到の変人桃源郷。
異常を超えた異常。
すごくろまんてぃっくですな。

ヒカルは後者を支持します。
というか正常の対義語が異常てどういうことですか。
正しいの逆と言うと悪のニュアンスが入ってしまうように感じる。
なんかそれは嫌だな。
異常は悪ではない。
と信じたいなぁ(遠い目)

つーかそもそも悪を悪い事(善の対義語と言ったほうがいいかな)と解釈すべきでないと思うのだが……それについてはまた今度。

「責任者とはな、全てにおいて責任を負う責務がある。だがそれと同時に、一番美味しい所を持っていく権利も有するもんじゃ」

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文化祭の総責任者であるまひろさんに対してのセリフ。
文化祭開催にあたって春樹や他のみんなが頑張った。
でも、末端の人間と責任者は違う。
責任者は文字通り責任を負う義務がある。
しかし!
一番評価されるのも責任者である。

部長も同じですね。
そうして報道部21代部長マウスは神となった……。

「人を動かすのは気持ちだ。本気だというのなら、示すべき気持ちがあるんじゃないのか?」

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人は「気持ち」で動く。また、人を「気持ち」で動かすこともできる。
しかし、思っているだけじゃ動かすことはできない。
示して初めて、「気持ち」は力を持つ。
この言葉は次の会話と連動している。

「とにかく、こういうことは早めに解決させるにかぎるぞ。時間が経てば溝が大きくなっていくものだ」
「溝?」
「そしてお前は勇気を失っていき、その溝を飛び越えられなくなる。時間が解決するとは、そういうことだ」

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時間が解決することはない。
早く自らの「気持ち」を示すために行動する
そして人を動かす。
その「人」の中にはもちろん自分も入っている。

手遅れになる前に、
時間が解決する前に。





さて、これからは解釈 に移ります。

ハッピーエンドについて考えます。
六つのルートがあったわけですが、そのなかでのヒカル的トゥルールートを考えます。
まずは、各ヒロインについて、「主人公と付き合った場合」と「付き合わなかった場合」についてどの程度幸せかを考えます。
graph.1

佐奈の?について。
佐奈は自身のルートと他ルートで決断が異なります。
「恋人」になるか「妹」として生きるか。
佐奈が春樹のことを好きなのは最初から明晰判明であります。
さて、ここで問題になってくるのが、
「妹であり続けるという選択は幸せか否か」
そんなものはわかりません。
そんなものを考えるのはひたすらナンセンス。
だからといって沈黙してしまうのもこれまたナンセンス。
ということでナンセンス野郎ヒカルは解釈します。

・佐奈は春樹のことが好き
→これは作品序盤から最後まで(誰のルートであったとしても)一貫しています。
・他のルートでは思いを告げられないまま終了している。
・佐奈ルートでも気持ちを伝えるのには時間がかかった。
佐奈は普段積極的で暴走してしまいますが、実は奥手であるという印象を受けました。

佐奈ルートでは「気持ち」を示すことができた。
他ルートではできなかった。
そしてそのまま、「妹」であり続けた。
それは解決ではない。
一線を超える「勇気」を失っただけだ。


そこに引かれていただけの線は亀裂になった。
亀裂は、目をそらした隙に溝となる。
大きく、大きくなった溝を目にした「妹」佐奈は、
ただそこで立ち呆けている。


しかし、妹でい続けるということは悲しいことだけではありません。
少なくともヒカルにはそう感じられます。
今生の別れになるわけではないのでね。

というわけで?には△を入れておきます。
graph.2

他の評価についてですが、各キャラ個別の記事を書く機会があれば書きます。
とりあえずは結果を見てください。
姫、葵、紫はどのルートでもある程度幸せになると予想。
佐奈はそこそこ。
ルリ、まひろは春樹じゃないと幸せじゃないと思いました。

ここでヒカル的トゥルールートver1.0について少し。
それは主人公及びヒロインが「懐い」を持ち生きること。
「懐い」という言葉については語ると長いので詳細な説明はまた別の記事を書きます故、ここでの説明はちょっとだけ。
「思い」「想い」「懐い」
読み方はすべて同じだが、込めているものが違う。
「思い」や「想い」を更に強くしたものが「懐い」
懐うだけで幸せになれる。
懐いは恋愛感情だけの話ではない。
信念、座右の銘もまた懐いとなり得る。
そして究極的には、懐う対象は代替が利かない。

そういった懐いのあるルート
そして幸せに溢れるルートこそがトゥルールートなのです。
ver1.0というのは、まだまだ変更の余地ありということですね。
ヒカルのレベルが上がり次第更新されていきます。
その時はトゥルールートも変化するかもしれません。
現時点での総決算と思っていただけたら幸いです。

というわけで、考えます。
ルリとまひろさん、この二人には懐いを感じました。
ここから先は微妙な違い。
エピローグから考えよう。
ルリは春樹とずっと一緒にいようと言う。浮気をする暇なんて与えないように。(まあ、春樹は浮気をするようなヤツじゃないですよ。ええ)
対し、まひろさんは進学のため少し離ればなれになる。
会えない時間その間は相手に触れられず、懐うしか無い。
むしろ常に一緒にいるよりルリより、懐っている時間は長いのではないか。
懐いは最終的には幸せへと変換される。
そうするとまひろさんのほうがトゥルールートに近いのではないでしょうか。

いや、断言しましょう。
まひろルートがトゥルールートだ!

解釈終わり。
幸せにはある程度の理由こそあれ、やはり主観は入ってしまいます。
だから考察ではなく解釈です。



感想です。
まあ、こんなもんかな。
プレイ中、プレイ直後は特に何かを感じたわけでもないですね。
シナリオについてはあまり期待せずに買ったのでまあよし。
でもキャラクターがなー。
いまいちグッと来るキャラがいなかったです。
佐奈には期待してたんだけどなー。

しかし、キャラ立ち絵のクオリティはすごいです。
会話中から何からキャラの表情が変わりまくります。
だからスクショに失敗します。
tenshin.7
感情がイキイキと伝わってきます。

イベントCGは、萌えゲーでよくあるキャラクターどーん。でした。
全体に対するキャラの面積が広すぎるよ。
もっと引いて欲しいです。
一枚の絵として見るのならば、微妙かな。
何枚かは良いと思ったのがあるのでOK

シナリオについては今まで語ったとおりです。
随所に御都合主義展開が見られ、シナリオの出来は良いとはあまり言えません。
しかし、それだけで駄作と決め付けるのは軽率でした。

プレイ終了直後よりも感想を書いた後のほうが評価が高くなりました。
コレに関しては二つの見方ができると思います。
・作品に触れている時間が長くなった。
→人間は好きだから見るのではなく、見るから好きになります(高校の現代文の教科書に書いてあった。はず)
コレは身を持って感じました。
ヒカルがアニメ「GJ部」を好きな理由は何回も何回も見たからです。
24時間耐久GJ部マラソンとか、センター試験終了直後の全話鑑賞会とか。
(余談だが、後者のせいでヒカルは滑り止めの大学に落ちたと言っても過言ではない。無論、後悔はしてない)

・作品の主題(もっともヒカル個人が感じたものですが)を理解した。
→天神乱漫の根本に触れた気がします。
この記事では書いてないのですが、理解ができなかった、無茶苦茶だった所をなんとかして正当化しようとしてました。
そういうことができるようになった時点で好きになったと言えるのじゃないでしょうか。



さて、今回の天神乱漫の感想をまとめますと、

・時間では物事を解決することができない
・故に早く気持ちを示す事が重要
・一番幸せなのはまひろさん



以上です。
いや~非常にコンパクトになってしまいましたね。
まとめはもちろん、この記事全体についてです。
スクショはあと100枚ほどあるのですよ。
ふふふ……

というわけで、天神乱漫の感想は以上です。


最後にこの感想を書くにあたって影響を受けたブログを紹介します。

猫箱ただひとつ。
ゲームをプレイしてなくても面白いと思える感想には憧れます。
是非どうぞ。

最後は天神乱漫の公式サイトのリンクです。
18歳以下及び高校生は見ちゃダメです。
天神乱漫 -LUCKY or UNLUCKY!?-